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函館記念の歴史 洋芝ハンデ戦40年が生んだ名馬と波乱の記録

洋芝ハンデ戦40年の波乱と名馬


夏の函館競馬場のイメージ
ℹ AI生成
この画像・動画は、AIによって生成された架空のイメージであり、実在の人物・馬・団体等を描写したものではありません。
また、肖像権・パブリシティ権に配慮し、特定の人物に類似させるための学習データ使用やプロンプト調整等はおこなっておりません。

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2025年6月29日の函館競馬場。10番人気のヴェローチェエラが、1分57秒6でゴール板の前を走り抜けました。
破られたのは、1988年にサッカーボーイが刻んだ1分57秒8。37年ものあいだ誰も届かなかった時計が、0.2秒だけ塗り替えられた瞬間でした。

函館記念は夏競馬を代表するG3で、芝2000mのハンデキャップ戦。条件そのものは、どこにでもある重賞です。ただ、舞台がJRA10場で唯一の洋芝コースとなると話は変わってきます。この組み合わせが、40年にわたって波乱と名場面を量産してきました。

3年続けてこのレースだけを勝ったエリモハリアー。函館記念を足がかりにG1の頂点まで駆け上がったニッポーテイオーとサッカーボーイ。かと思えば、15番人気や14番人気がゴールへ飛び込んだ年もある。1986年から2025年まで、40回分の記録を並べていくと、他の重賞ではあまりお目にかからない顔つきが浮かんできます。

目次

函館競馬場 JRA唯一の洋芝コース


函館の芝コースは、オーチャードグラスやケンタッキーブルーグラスといった洋芝でできています。本州のJRA競馬場で主流の野芝とは、そもそも根の張り方が違う。クッション性が高い反面、時計はかかりやすくなります。
最終直線はわずか262.1m。JRA全10場でいちばん短い直線です。1周1626.6mの小回りと合わさると、おのずと先行力が生きるレイアウトになります。問われるのはスピードの絶対値ではなく、洋芝の上で脚を使えるかどうか。そこで勝負が決まります。

人気別データに見る波乱の構造


1986年から2025年まで、40回分の勝ち馬がどの人気から出ているのかを集計してみました。
※本記事のデータは編集部による独自集計です。

人気 勝利数 勝率
1番人気 8勝 20.0%
2〜3番人気 12勝 30.0%
4〜6番人気 11勝 27.5%
7〜9番人気 4勝 10.0%
10番人気以上 5勝 12.5%

1番人気の勝率は20%。JRA重賞全体ではおおむね30%前後ですから、ここではっきり数字が沈んでいます。
しかも4〜6番人気が11勝・27.5%と、上位人気にほとんど肩を並べている。中位人気でも普通に勝負になるということです。

極端なのは2桁人気で、40年のあいだに5回も勝ち切っています。その顔ぶれがこちら。

勝ち馬 人気 斤量
1992 ヒガシマジョルカ 13番人気 51kg
1993 ゴールデンアイ 11番人気 55kg
2000 クラフトマンシップ 14番人気 52kg
2020 アドマイヤジャスタ 15番人気 54kg
2025 ヴェローチェエラ 10番人気 56kg

51kgのヒガシマジョルカ、52kgのクラフトマンシップ。軽ハンデを味方につけた一発が、やはり目を引きます。
なかでも2020年のアドマイヤジャスタは強烈でした。16頭立ての15番人気、斤量は54kg。これで1番人気カウディーリョ(55kg・7着)も2番人気レイエンダ(57kg・11着)も、まとめて後ろに従えてしまったのです。1〜2着が15番人気と13番人気という決着には、函館記念の地が出ています。

ハンデ戦では、実績を残した馬ほど重い斤量を背負わされます。トップハンデの実力馬が伸びを欠き、軽ハンデの伏兵が浮かび上がる。そこへ洋芝が走れるかどうかという適性差が乗ってくると、人気どおりの並びはあっけなく崩れていきます。

エリモハリアー 前代未聞の3連覇


夏の函館でレースに挑む馬のイメージ
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この画像・動画は、AIによって生成された架空のイメージであり、実在の人物・馬・団体等を描写したものではありません。
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エリモハリアー。2005年から2007年にかけて、この馬は函館記念を3年連続で勝ちました。同じ重賞を3年続けて獲るというのは、JRAの現行重賞体系でも滅多に出てこない記録です。

父はジェネラス。1991年に英ダービー・愛ダービー・キングジョージを勝った名馬です。母エリモハスラーの母父はブレイヴェストローマン。2000年3月21日生まれ、北海道・山田牧場の生産馬で、性別はセン馬でした。
デビューしてしばらくは、条件戦を行ったり来たりの日々が続きます。京都や阪神のオープン特別では掲示板までは来るものの、あと一歩が出ない。2004年に挑んだ福島記念(G3)も9着でした。中央の重賞ではまだ足りないか。そう見られていた矢先のことです。

転機は2005年の夏。巴賞(函館芝1800m)を7番人気で快勝し、その勢いのまま函館記念に向かいます。
鞍上は北村浩平騎手、斤量55kg、人気は6番手。決して本命視されてはいませんでしたが、2分00秒7で勝ち切りました。

翌2006年は連覇がかかります。前走の金鯱賞(G2)で3着に好走しており、前年とは立場が違う。鞍上も安藤勝己騎手に替わって、今度は1番人気。斤量は56kgに増えたものの、2分05秒1で危なげなく2連覇を決めました。もっとも、このタイムが語るように馬場はかなり重く、走破時計で能力を測れる一戦ではありません。

圧巻は2007年でした。前哨戦の巴賞ではまさかの11着大敗。斤量は57kgまで重くなり、騎手も武幸四郎騎手に替わって、人気は7番手まで沈みます。
ところが本番、別の馬かと思うほど走りました。2分02秒8、3連覇。
3年で騎手が3人替わり、斤量も55kg、56kg、57kgと積み上がっていく。それでも函館記念だけは、きっちり勝つのです。

2008年は4連覇を狙って出てきたものの、57.5kgのトップハンデが応えたか4着。
10歳を迎えた2010年にも16番人気で姿を見せましたが、結果は13着。引退まで函館に通い続けた馬ですが、ほかの重賞となると話は別で、札幌記念は5着・6着・8着、毎日王冠は10着・4着・16着と、どうにも振るいません。

本州の野芝では走らない。同じ北海道でも札幌ではいまひとつ。それが函館の2000mに戻ったとたん、まるで別の馬になる。不思議な馬でした。

函館記念から羽ばたいた名馬たち


函館記念での勝利を弾みに、そのままG1戦線へ攻め上がっていった馬もいます。

記録をさかのぼって最も古い例が、1986年のニッポーテイオー。父リイフォー、母チヨダマサコ、母父ラバージョン。皐月賞では8着に沈みましたが、そこからNZトロフィー4歳S(G2)を制し、ラジオたんぱ賞2着をはさんで函館記念へ駒を進めます。2番人気・55kgで快勝すると、もう止まりませんでした。
翌1987年は天皇賞(秋)とマイルチャンピオンシップを連勝してG1を2勝。さらに1988年の安田記念も加え、通算G1・3勝。立派な名マイラーです。

もう1頭、1988年のサッカーボーイ。
父ディクタス、母ダイナサッシュ。阪神3歳ステークス(当時G1)を勝った期待の馬でしたが、日本ダービーでは1番人気に推されながら15着と大敗していました。
その立て直しの舞台が、函館記念でした。1番人気・56kgで出走して、勝ちタイムは1分57秒8。2025年にヴェローチェエラが塗り替えるまで、実に37年ものあいだ生き残ったレコードです。

ダービーからの間隔は詰まっており、陣営も勝負というより状態の確認くらいの気持ちだったのかもしれません。ところが、サッカーボーイはここで完全に息を吹き返します。秋にはマイルチャンピオンシップ(G1)を制し、有馬記念でも3着。駆け抜けるように短かった現役に、くっきりと爪痕を残しました。

2013年には、武豊騎手とのコンビで臨んだトウケイヘイローが函館記念を勝ち、勢いそのままに札幌記念(G2)も連勝してみせます。天皇賞(秋)では2番人気の支持を集めました(結果は10着)。
函館記念、札幌記念、そして天皇賞。ニッポーテイオーやサッカーボーイが描いたのと同じ上り坂を、この馬もたどろうとしていたわけです。

近年の函館記念と37年ぶりのレコード


北海道の競馬場で走る競走馬のイメージ
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2022年は、白毛馬ハヤヤッコが7番人気で函館記念を制しました。父キングカメハメハ、母マシュマロはシラユキヒメの娘。ソダシとはいとこにあたる血筋です。ダート重賞のレパードステークス(G3)を勝っていた馬が、芝に替わってもきっちり勝つ。砂と芝をまたぐ異色の二刀流が、ちょっとした話題になりました。

翌2023年はローシャムパーク。父ハービンジャー、母父キングカメハメハ。1番人気の評価に応えて快勝すると、秋にはオールカマー(G2)も勝ち、明けて大阪杯(G1)では2着まで食い込んでいます。

そして冒頭の2025年、ヴェローチェエラです。父リアルスティール、母父ディープインパクト。10番人気・56kgで臨んだ一戦を、1分57秒6で走り切りました。
見るべきは勝ち馬だけではありません。2着ハヤテノフクノスケ(6番人気)が1分57秒9、3着マイネルメモリー(14番人気)も1分57秒9。上位3頭がそろって、サッカーボーイの旧レコードを上回ってしまったのです。
1番人気ディマイザキッドにしても、1分58秒0で4着。上位4頭がわずか0.4秒のなかにひしめく、いかにもハンデ戦らしい大接戦でした。

2026年函館記念の注目馬


2026年の函館記念は15頭立て。枠順も確定しました。まずは出走馬をひと通り並べておきます。

馬番 馬名 性齢 騎手
11バルナバ牡4斎藤新
22ファウストラーゼン牡4小林美駒
23ピースワンデュック牡5佐々木大輔
34マジックサンズ牡4横山和生
35イガッチ牡4浜中俊
46サンストックトン牡7松本大輝
47チャックネイトセ8鮫島克駿
58ケイアイセナ牡7武豊
59オニャンコポンセ7横山琉人
610ケリフレッドアスク牝4北村友一
611ジュタ牡4坂井瑠星
712エコロディノス牡4池添謙一
713アラタ牡9大野拓弥
814フィーリウス牡4丹内祐次
815デビットバローズセ7岩田望来

まず目が行くのは、5枠8番のケイアイセナ。鞍上は武豊騎手です。武豊騎手は2013年にトウケイヘイローでこのレースを勝っており、13年ぶりの函館記念制覇がかかる一戦になります。

個人的に気になっているのは、7枠13番のアラタ。9歳という年齢です。大野拓弥騎手との長いコンビで函館記念は2022年6着、2023年9着と結果こそ出ていませんが、2024年秋には福島記念(G3)を7番人気で勝ち切っています。10歳で函館記念に出走したエリモハリアーの例を思えば、年齢だけで消すのはもったいない。

4歳勢では、エコロディノス(京都記念G2・3着)と、矢作芳人厩舎・坂井瑠星騎手のジュタに注目しています。チャックネイトとオニャンコポンの2頭はセン馬。夏場にぐっと上向くタイプだけに、軽くは見られません。
紅一点のケリフレッドアスクは、藤原英昭厩舎の4歳牝馬。ハンデ戦の斤量の恵みをどこまで生かせるか。そこが勝負どころになりそうです。

まとめ


2007年7月22日の函館競馬場。7番人気まで評価を落としていたエリモハリアーが、巴賞11着の不振などなかったかのように3連覇のゴールへ飛び込んだとき、スタンドから小さなどよめきが起きたといいます。
57kgを背負い、騎手も替わって、それでも勝つ。あの日の光景だけは、いまも忘れられずにいます。

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