セン馬(騸馬)とは?去勢の理由・最強ランキング・中央G1勝利15頭
セン馬(騸馬・読み方は「せんば」)とは、去勢された牡馬のこと。気性が荒くて能力を発揮できない牡馬を去勢し、気性面を落ち着かせて競走馬として走らせる発想から生まれた制度です。出馬表の性別欄では「セ」と表記されます。日本では桜花賞・皐月賞・日本ダービー・優駿牝馬・菊花賞のクラシック5競走には出走できない一方、天皇賞・ジャパンカップ・有馬記念・安田記念などそれ以外のG1には出走可能です。
また、肖像権・パブリシティ権に配慮し、特定の人物に類似させるための学習データ使用やプロンプト調整等はおこなっておりません。
[使用ツール・モデル]
・DALL·E 3
・Firefly
・StableDiffusion
・Juggernaut XL(KandooAI)
中央G1を勝った日本のセン馬は、レガシーワールド(1993年ジャパンカップ)、マーベラスクラウン(1994年ジャパンカップ)、トウカイポイント(2002年マイルチャンピオンシップ)、サウンドトゥルー(2016年チャンピオンズカップ)、ノンコノユメ(2018年フェブラリーステークス)の5頭のみ。約35年で5勝、平均すると7年に1頭という稀少さです。
ただし、海外馬まで含めると中央G1を勝ったセン馬は全15頭います。しかも2024年安田記念のロマンチックウォリアー(香港)、2025年ジャパンカップのカランダガン(フランス)と2年続けて。日本のセン馬が7年に1頭のペースなのに対し、海外のセン馬は毎年のように日本の大レースを勝ちに来ています。
以下、セン馬の制度と去勢手術の中身、香港・豪州・欧州にセン馬が多い構造的な理由、日本のセン馬が35年で8倍に増えた話、編集部が独自集計した「セン馬の馬券回収率」と「中央獲得本賞金TOP10」、中央G1を勝った15頭の一覧、そして引退後の行き先までを順に置きます。
去勢の動機は、ほぼ「気性難」の一語に集約されます。
パドックでチャカつく、ゲートで暴れる、馬群に入ると行きたがって我慢が利かない。能力はあるはずなのに、レースの呼吸に合わせられない牡馬は珍しくありません。陣営が最後の手段として選ぶのが去勢です。
体への副次効果としては、ホルモンバランスの変化で筋肉の張りが落ち着き、慢性的な脚元のトラブルが減りやすい、と言われます。マグナーテンが7歳でAJCC(G2)を勝ったり、サウンドトゥルーが11歳まで現役を続けたりしたように、息の長い活躍に向くタイプが多いのもこの体質変化が背景にあるとされます。
ただし、引き換えは大きい。
去勢された牡馬は二度と繁殖の道に戻れず、種牡馬として血を残す可能性はゼロになります。これは血統登録制度の根幹に関わる話で、馬主・牧場・調教師の合意がそろわないと踏み切れません。レース成績の改善を取りに行く代わりに、競走馬として持っていた「もう一つの将来」を完全に手放す。これが去勢という決断の重みです。
去勢手術自体は、獣医療の現場では確立した処置です。手順を簡単に追います。
術前に馬体重の測定と聴診で全身状態を確認し、後肢と口腔内の洗浄、絶食。麻酔薬を投与して倒馬させ、四肢を保定器具で固定し、機械で吊って手術マットへ移します。陰嚢を切開して両側の精巣を露出させ、片方ずつ専用器具で挫滅・切除。止血を確認したら麻酔の覚醒を待ち、立ち上がって歩様が安定すれば一連の処置は終了です。
所要時間は1時間半前後。馬体への侵襲を最小限にするため、執刀から覚醒までの段取りが分単位で組まれます。
復帰までの目安は、術後1〜2週間で運動再開、1ヶ月程度で本格調教へ戻すケースが多いとされます。気性の落ち着きは即日見えるものではなく、3ヶ月ほどかけて少しずつ表れます。レガシーワールドが「5戦0勝で去勢→翌年セントライト記念で重賞初制覇」というルートを通ったのも、去勢直後ではなく休養を挟んで翌シーズンに照準を合わせたから、と読むのが自然です。
香港・豪州のG1馬を眺めていると、セン馬の比率の高さに驚きます。香港スプリントを連覇し2005年のスプリンターズSも1番人気で制したサイレントウィットネス、2024年の安田記念を1番人気で勝ったロマンチックウォリアー、JCを制して5億円を持ち帰った2025年のカランダガン(仏セン馬)。海外馬の選定リストを並べていくと、半数以上がセン馬という年も普通にあります。
また、肖像権・パブリシティ権に配慮し、特定の人物に類似させるための学習データ使用やプロンプト調整等はおこなっておりません。
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背景はシンプルで、香港には生産拠点(生産牧場)がほぼ存在しません。馬は欧州・豪州・ニュージーランドから輸入してきて、香港で走らせるだけ。引退後の種牡馬需要が国内で完結しないため、繁殖の道を残す経済的合理性が薄いのです。香港のクラシック競走(クラシックマイル・香港ダービー)はセン馬でも出走可能で、牝馬限定戦も存在しません。日本とは制度設計の前提から違うわけです。
豪州も似た構造を持ちます。シャトル種牡馬の供給は北半球から潤沢に届くため、芝のスプリント・マイル路線で活躍する現役馬を去勢して長く使う発想が一般化しています。テイクオーバーターゲット(2006年スプリンターズS優勝)のような10戦級の遠征を続ける馬は、去勢されているからこそ世界中を移動できる、という側面もあります。
欧州も例外ではありません。2025年のジャパンカップを4番人気で制したカランダガンは、フランスのセン馬です。2025年だけでもサンクルー大賞(仏G1)、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(英G1)、英チャンピオンステークス(英G1)を勝ち、その足で日本まで来て府中の2400mを取っていきました。
よく検索されるのが「カランダガンはなぜ去勢されたのか」という問いです。出走記録をさかのぼると、答えははっきりしています。2023年8月のデビュー戦(2歳新馬)の時点で、すでにセン馬として出走しているのです。
つまり、日本の5頭のように「走らなくなったから去勢した」のではなく、走り出す前から去勢されていた。欧州や香港では、素質を認めながらも早い段階で去勢に踏み切る判断が珍しくありません。種牡馬としての価値を最初から計算に入れず、競走馬として長く使い切る前提で仕上げる、という設計思想の違いです。
日本で同じ決断をすれば「将来の種牡馬を捨てた」と言われます。カランダガンは去勢された身でG1を4つ勝ち、5億円を持ち帰りました。どちらが正しいという話ではなく、前提が違う、というだけのことです。
ロマンチックウォリアー(香港)も忘れられません。2024年6月2日の安田記念を1番人気で制覇。香港のセン馬が東京のマイルG1を、人気に応えて勝ち切りました。翌2025年はカランダガン。2年続けて海外のセン馬が中央G1を持って帰ったことになります。
香港歴代最強馬と謳われたゴールデンシックスティ(2024年9月引退・通算31戦26勝・うちG1 10勝)も、もちろんセン馬です。引退後は北海道のノーザンホースパークで余生を過ごすことが香港ジョッキークラブから明言されており、種を残せない代わりに、競走馬として駆け抜けた時間そのものが評価される文化が、香港にはあります。
余談ですが、香港から来た馬の馬名表記には書き手の癖が出ます。「ゴールデンシックスティ」「ロマンチックウォリアー」と一語で書く流派と「ゴールデン・シックスティ」と中黒で区切る流派が混在していて、いまでも統一されていません。今回は JRA 公式の表記に合わせました。
「日本はセン馬が少ない」というのは、半分だけ正しい話です。中央競馬の出走に占めるセン馬の割合を数えてみると、この35年でずいぶん景色が変わっています。
※本記事のデータは編集部による独自集計です。
| 年 | セン馬の出走比率 | 走ったセン馬の頭数 |
|---|---|---|
| 1990年 | 0.63% | 39頭 |
| 2000年 | 2.68% | 258頭 |
| 2010年 | 2.77% | 331頭 |
| 2020年 | 5.10% | 615頭 |
| 2025年 | 4.91% | 584頭 |
| 2026年(8月上旬まで) | 5.28% | 526頭 |
1990年は出走の0.63%、走っていたセン馬はわずか39頭でした。それが2026年には5.28%、526頭。比率で8倍以上、頭数で13倍以上です。いまや中央のレースに出ている馬の20頭に1頭がセン馬という計算になります。
2000年前後に一段、2010年代に入ってもう一段。段差が2つあるのは、地方から中央への移籍が増えた時期と、去勢への抵抗感が薄れた時期がそれぞれ重なっているように見えます。
それでも、中央G1を勝った日本のセン馬は5頭のまま止まっています。数は増えたのに、頂点には届かない。理由はシンプルで、日本では「クラシックを狙える素質馬ほど去勢しない」からです。種牡馬としての価値が大きいほど、去勢の代償も大きくなる。結果として、去勢に踏み切れるのは条件戦で頭打ちになった馬が中心になり、その層からG1馬が出る確率は高くありません。
香港や欧州にセン馬のG1馬が多いのは、この足かせが最初から無いからだと考えると、辻褄が合います。
ここからは編集部が独自集計したデータで、セン馬の馬券的な特徴を見ていきます。集計対象は2021〜2025年の中央競馬全11,916出走。単勝オッズに基づく回収率(100円賭けて何円戻ったか)と勝率を、全体平均と比較しました。
※本記事のデータは編集部による独自集計です。
| カテゴリ | 出走数 | 勝率 | 単勝回収率 | 複勝率 |
|---|---|---|---|---|
| セン馬(全体) | 11,916 | 5.7% | 71.3% | 18.7% |
| 牡牝合計(全体) | 223,922 | 7.4% | 71.5% | 22.2% |
全体の数字だけ見れば、セン馬の単勝回収率は7割そこそこで、牡牝の数字とほぼ同じ。控除率に押し下げられた水準で並んでおり、「セン馬は儲かる/儲からない」と一括りにできる差ではありません。
ここからが本題で、馬場・年齢・人気帯の3軸で切り直すと、傾向が出てきます。
馬場別の傾向
| カテゴリ | 馬場 | 出走数 | 勝率 | 単勝回収率 |
|---|---|---|---|---|
| セン馬 | 芝 | 4,417 | 5.1% | 78.2% |
| 牡牝合計 | 芝 | 106,356 | 7.6% | 71.5% |
| セン馬 | ダート | 6,045 | 5.1% | 63.7% |
| 牡牝合計 | ダート | 112,244 | 7.2% | 71.2% |
| セン馬 | 障害 | 1,454 | 10.0% | 81.7% |
| 牡牝合計 | 障害 | 5,322 | 9.1% | 79.5% |
芝のセン馬は単勝回収率78.2%、サンプル4,417出走。全体平均より6.7ポイント上で、5年間の集計でこの差が出るのは無視できません。逆にダートは63.7%、サンプル6,045出走。全体より7.5ポイント下。
背景の仮説として、芝の上がり勝負ではセン馬の「気性の落ち着き」が直結しやすく、ダートのパワー勝負では筋肉量がやや劣るセン馬が押し負けやすい、という線で読んでいます。仮説の真偽はさておき、5年間の数字としては動かしようがありません。
障害は81.7%で全体(79.5%)より少し上。サンプル数が薄いので結論は控えますが、ジャンプの集中力という意味で気性面の改善が効きやすいのかもしれません。
年齢別の傾向
| 年齢 | 出走数 | 勝率 | 単勝回収率 |
|---|---|---|---|
| 3-4歳 | 4,971 | 6.3% | 67.1% |
| 5歳 | 2,775 | 6.7% | 99.8% |
| 6歳 | 2,157 | 4.5% | 53.7% |
| 7歳以上 | 2,013 | 3.9% | 61.1% |
5歳セン馬の単勝回収率は99.8%。100円賭ければほぼ100円戻る計算で、5年分の集計値とは思えない数字が出ています。
セン化のタイミングは4歳〜5歳になることが多く、5歳はちょうど「気性の落ち着き+体の完成」が重なる時期。3-4歳はまだ馬体が定まらず、6歳以降はピークアウトで一気に下がる。「セン馬を狙うなら5歳」という覚え方は、覚えておいて損のない補助線です。
人気帯別の傾向
| カテゴリ | 人気帯 | 勝率 | 単勝回収率 |
|---|---|---|---|
| セン馬 | 1-3番人気 | 21.5% | 84.4% |
| 全体 | 1-3番人気 | 22.3% | 79.4% |
| セン馬 | 4-6番人気 | 6.8% | 74.2% |
| 全体 | 4-6番人気 | 7.2% | 77.7% |
| セン馬 | 7-10番人気 | 2.5% | 68.5% |
| 全体 | 7-10番人気 | 2.6% | 75.2% |
| セン馬 | 11番人気以下 | 0.8% | 66.2% |
| 全体 | 11番人気以下 | 0.6% | 57.0% |
人気帯別では、1-3番人気と11番人気以下の両端で全体平均を上回る傾向が出ます。
1-3番人気のセン馬は単勝回収率84.4%(全体79.4%より+5pt)。気性の安定が人気帯の上位馬で力を素直に発揮させる方向に効いている、と読めます。
11番人気以下のセン馬は単勝回収率66.2%(全体57.0%より+9pt)。勝率自体は0.8%と低いものの、たまに激走するときの配当が大きく、控除率の壁を9ポイント分も削ります。トウカイポイント(2002年マイルCS・11番人気1着)、ノンコノユメ(2018年フェブラリーS・4番人気1着)、サウンドトゥルー(2016年チャンピオンズC・6番人気1着)と、中央G1を勝った日本のセン馬がそろって人気薄からの突き抜けだったことを思い出すと、この数字には実感が伴います。
逆に4-6番人気・7-10番人気の中穴ゾーンは全体平均より下。本命でも穴でもない中間の人気でセン馬を買うのは、データ上は損のほうが大きい賭け方になります。
「強いセン馬とは誰か」という問いに、賞金で答えを出します。下表は現役期間にセン馬登録があった馬を対象に、中央競馬で稼いだ本賞金を集計したものです。
| 順位 | 馬名 | 生年 | 中央獲得本賞金 | 中央出走 | 勝 | 父 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | カランダガン | 2021 | 5億0,000万円 | 1 | 1 | Gleneagles |
| 2 | アサカディフィート | 1998 | 4億5,700万円 | 73 | 11 | パラダイスクリーク |
| 3 | マグナーテン | 1996 | 4億4,320万円 | 33 | 10 | Danzig |
| 4 | レガシーワールド | 1989 | 4億1,636万円 | 31 | 7 | モガミ |
| 5 | マーベラスクラウン | 1990 | 4億0,610万円 | 20 | 7 | Miswaki |
| 6 | フェイムゲーム | 2010 | 4億0,500万円 | 28 | 7 | ハーツクライ |
| 7 | ホットシークレット | 1996 | 3億8,890万円 | 39 | 7 | ハンティングホーク |
| 8 | カレンミロティック | 2008 | 3億6,150万円 | 41 | 6 | ハーツクライ |
| 9 | エリモハリアー | 2000 | 3億4,686万円 | 63 | 9 | ジェネラス |
| 10 | ノンコノユメ | 2012 | 3億4,440万円 | 20 | 7 | トワイニング |
首位のカランダガンは、2025年ジャパンカップを4番人気で制した仏のセン馬。JC1走だけで5億円を獲って首位に躍り出た特例で、純粋な「現役で長く積み上げた」型ではありません。ランキングの主役はむしろ2位以下。
2位アサカディフィート(73戦11勝)と3位マグナーテン(33戦10勝・関屋記念連覇)、4位レガシーワールドと5位マーベラスクラウン(ともにジャパンカップ1着)、これらは「セン馬で長く走った」ことが賞金に直結した正統派です。
6位フェイムゲームは父ハーツクライの晩成スティイヤーで、ダイヤモンドS連覇など長距離戦の常連。8位カレンミロティックは2014年宝塚記念と2016年天皇賞(春)でいずれも2着(16年は13番人気での激走)、9位エリモハリアーは函館記念連覇。
10位ノンコノユメだけが、後述する「中央G1勝利の5頭」の中から名前を出しています。ほかの4頭(マーベラスクラウン・レガシーワールド・トウカイポイント・サウンドトゥルー)も賞金30位以内には全員入っており、セン馬の中央G1勝利と賞金累計はだいたい相関する、と読んで差し支えありません。
「セン馬でG1を勝った馬」を調べると、日本の5頭ばかりが出てきます。ただ、中央競馬のG1を勝ったセン馬は、海外馬まで数えると15頭います。太字が日本調教馬です。
※本記事のデータは編集部による独自集計です。
| 年 | レース | 馬名 | 人気 | 所属 |
|---|---|---|---|---|
| 1990年 | ジャパンカップ | ベタールースンアップ | 2人気 | オーストラリア |
| 1993年 | ジャパンカップ | レガシーワールド | 6人気 | 日本(栗東) |
| 1994年 | ジャパンカップ | マーベラスクラウン | 6人気 | 日本(栗東) |
| 2000年 | 安田記念 | フェアリーキングプローン | 10人気 | 香港 |
| 2002年 | マイルチャンピオンシップ | トウカイポイント | 11人気 | 日本(美浦) |
| 2003年 | ジャパンカップダート | フリートストリートダンサー | 11人気 | アメリカ |
| 2005年 | スプリンターズステークス | サイレントウィットネス | 1人気 | 香港 |
| 2006年 | 安田記念 | ブリッシュラック | 3人気 | 香港 |
| 2006年 | スプリンターズステークス | テイクオーバーターゲット | 1人気 | オーストラリア |
| 2010年 | スプリンターズステークス | ウルトラファンタジー | 10人気 | 香港 |
| 2015年 | 高松宮記念 | エアロヴェロシティ | 4人気 | 香港 |
| 2016年 | チャンピオンズカップ | サウンドトゥルー | 6人気 | 日本(美浦) |
| 2018年 | フェブラリーステークス | ノンコノユメ | 4人気 | 日本(美浦) |
| 2024年 | 安田記念 | ロマンチックウォリアー | 1人気 | 香港 |
| 2025年 | ジャパンカップ | カランダガン | 4人気 | フランス |
15頭のうち日本調教馬は5頭だけで、残る10頭は香港6・オーストラリア2・アメリカ1・フランス1。日本のセン馬が中央G1を勝ったのは2018年のノンコノユメが最後ですが、海外のセン馬は2024年ロマンチックウォリアー、2025年カランダガンと直近2年続けて勝っています。
勝ったレースの内訳も特徴的です。スプリンターズステークス3勝・安田記念3勝・ジャパンカップ3勝で、この3つだけで15勝中9勝。短距離とマイル、そして海外馬に開かれた国際競走に偏っています。逆に、天皇賞(春・秋)と有馬記念を勝ったセン馬は一頭もいません。
人気の面では、1番人気での勝利はわずか3頭(2005年サイレントウィットネス・2006年テイクオーバーターゲット・2024年ロマンチックウォリアー)。一方で10番人気以下が4頭もいます。後述する人気帯別の集計で「セン馬は本命か大穴で買え」という結論が出ますが、G1の勝ち馬15頭の分布はその形をそのままなぞっています。
年齢にも偏りがあります。馬齢表記が満年齢に統一されたあと(2002年以降)に勝った11頭のうち、10頭が5歳以上。4歳での勝利は2025年のカランダガンだけです。セン化から気性が落ち着くまで数ヶ月かかり、そこから馬体が完成するのを待つ——先に見た「5歳セン馬の単勝回収率99.8%」という数字と、きれいに符合します。
ここからは中央G1を勝った日本のセン馬5頭を順に追います。約35年で5頭、年代別に並べると、それぞれの「去勢の理由」と「勝利の文脈」が見えてきます。
◆レガシーワールド(1989年生・1993年JC)
栗東の名門・戸山為夫厩舎の出。同期に無敗の二冠馬ミホノブルボンがいて、入厩当時から素質の高さは評価されながらも結果が出ない時期が続きました。5戦0勝の時点で去勢。
翌1992年のセントライト記念(G2)で重賞初制覇、暮れの有馬記念で2着まで詰め寄り、1993年のジャパンカップで6番人気ながら勝利。管理した戸山為夫師は同年5月に肝不全で他界しており、9月から後を継いだ森秀行師の手でG1馬となった経緯は、いまも語り草です。
また、肖像権・パブリシティ権に配慮し、特定の人物に類似させるための学習データ使用やプロンプト調整等はおこなっておりません。
[使用ツール・モデル]
・DALL·E 3
・Firefly
・StableDiffusion
・Juggernaut XL(KandooAI)
通算31戦7勝、中央獲得本賞金4億1,636万円。1995年以降は16着・13着・11着と苦しい引退レースを並べて姿を消しましたが、ジャパンカップを6番人気で勝った1993年11月28日、府中の2分24秒4はいまでも記録欄が映えます。河内洋騎手にとっても、復活劇の象徴として語られる一鞍です。
◆マーベラスクラウン(1990年生・1994年JC)
新馬戦は勝ったものの、調教中に騎手を振り落とすなど気性の悪さで素質を伸ばし切れず、セン化。去勢後はトモがしっかりして、条件戦で連勝。1994年の金鯱賞(G3)で重賞初制覇、京都大賞典(G2)で重賞2勝目。
迎えたジャパンカップは6番人気。米から参戦の半兄グランドフロティラ(結果は8着)との対決も話題でしたが、当のマーベラスクラウンはパラダイスクリークと壮絶な叩き合いの末、ハナ差で振り切りました。
また、肖像権・パブリシティ権に配慮し、特定の人物に類似させるための学習データ使用やプロンプト調整等はおこなっておりません。
[使用ツール・モデル]
・DALL·E 3
・Firefly
・StableDiffusion
・Juggernaut XL(KandooAI)
通算20戦7勝、中央獲得本賞金4億0,610万円。引退後は乗馬として活躍し、半兄との「セン馬対セン馬」の海外馬対決もJC史に残るトピックとして語り継がれています。
◆トウカイポイント(1996年生・2002年マイルCS)
父はかの2冠馬トウカイテイオー。藤沢和雄厩舎ではなく松元省一厩舎の管理で、デビューから牡馬時代に19戦して条件戦をなんとか勝ち上がる程度の馬でした。セン化後、2001年関屋記念には届きませんでしたが、2002年中山記念(G2)を8番人気で奪取。札幌記念(G2)2着、富士ステークスを叩いて挑んだのが11月17日のマイルチャンピオンシップ。
11番人気・蛯名正義騎手騎乗。逃げたエイシンプレストンに後続が動けず、トウカイポイントは内ラチ沿いから一気に伸びてキングヘイローを差し切りました。
通算32戦6勝、中央獲得本賞金3億0,855万円。父トウカイテイオー譲りの飛び抜けた瞬発力は、セン化されてから初めて素直に出てきた、と評価するのが正確です。
◆サウンドトゥルー(2010年生・2016年チャンピオンズC)
父フレンチデピュティ、生まれ持ったダート体型。3歳の春に新馬を勝ったあと、長く条件戦を回り続けた末に4歳12月でセン化。
セン化後の充実は地方戦線で先に表れます。2015年12月の東京大賞典(地方G1)を獲って、年明けの中央G1は3年連続で挑戦。3度目の正直となった2016年12月4日のチャンピオンズカップは、6番人気・大野拓弥騎手騎乗で、ノンコノユメ・アスカノロマンを差し切る豪快な末脚での勝利でした。
また、肖像権・パブリシティ権に配慮し、特定の人物に類似させるための学習データ使用やプロンプト調整等はおこなっておりません。
[使用ツール・モデル]
・DALL·E 3
・Firefly
・StableDiffusion
・Juggernaut XL(KandooAI)
以降も7歳でJBCクラシック(地方G1)を勝ち、地方・船橋競馬に移籍してからも賞金を積み増し、11歳の引退まで現役。獲得賞金は中央+地方で約7億6,000万円。セン馬としてはダート長距離・ダート中距離のオールラウンダーとして異例の長期活躍でした。
◆ノンコノユメ(2012年生・2018年フェブラリーS)
父はダート系種牡馬として地味なトワイニング。デビューから2015年武蔵野S(G3)を勝つまで順調でしたが、その後3年間はG1で2着・4着・6着・8着・9着と勝ち切れない。2017年の暮れにセン化が決断されます。
セン化明けの2018年1月、根岸ステークス(G3)を6番人気で勝つと、続く2月18日のフェブラリーステークスを4番人気・内田博幸騎手で完勝。約3年越しの初G1でした。
通算20戦7勝、中央獲得本賞金3億4,440万円(賞金TOP10)。セン化が起死回生の引き金になった代表例として、いまも気性難で伸び悩む牡馬の去勢判断のリファレンスに使われます。
5頭の共通項として、いずれもセン化後に重賞・G1へ届いたこと、勝った中央G1のレースで4〜11番人気だったことの2点が際立ちます。前者は気性面の改善が走りに直結した証拠、後者は「セン馬は中穴ゾーンを避けて、本命か大穴で買え」という独自集計(人気帯別)の結論をそのままなぞる挙動です。
セン馬の話をすると、必ず出てくるのが「引退したあとはどうなるの」という疑問です。
答えの前半ははっきりしています。種牡馬にはなれません。血を残す道は去勢の時点で完全に閉じており、そこに例外はありません。行き先は乗馬・誘導馬・功労馬のいずれかが中心になります。1994年のジャパンカップを勝ったマーベラスクラウンは引退後に乗馬となり、香港のゴールデンシックスティは北海道のノーザンホースパークで余生を送ることが香港ジョッキークラブから明言されました。
ただ、答えの後半はあまり語られません。セン馬はそもそも引退が遅いのです。
2021〜2025年の中央競馬を性別で切り分けると、こうなります。
| 性別 | 延べ出走 | 平均馬齢 | 7歳以上の割合 | 9歳以上の割合 |
|---|---|---|---|---|
| セン馬 | 11,916 | 4.99歳 | 16.9% | 2.43% |
| 牡馬 | 125,815 | 3.66歳 | 4.6% | 0.43% |
| 牝馬 | 98,109 | 3.37歳 | 0.9% | 0.03% |
7歳以上での出走は、セン馬が16.9%に対して牡馬は4.6%。3.7倍です。9歳以上に絞ると2.43%対0.43%で5.7倍まで開きます。平均馬齢も、セン馬の4.99歳に対して牡馬は3.66歳。1歳3か月ぶん長く走っている計算になります。
理由は身も蓋もありません。種牡馬入りという「出口」が無いから、走れるうちは走るのです。牡馬なら4〜5歳で成績が頭打ちになった時点で繁殖入りの話が出ますが、セン馬にその選択肢はない。サウンドトゥルーが11歳まで、アサカディフィートが73戦、エリモハリアーが63戦を走れたのも、この一点に尽きます。
繁殖の道を閉じる代わりに、競走馬としての時間が長くなる。「引退後どうなるか」への正直な答えは、「引退そのものが遅い。そして引退したら乗馬か誘導馬になる」です。
※上表は編集部による独自集計(2021〜2025年・中央競馬)です。
Q. セン馬(騸馬)とは何ですか?
セン馬(騸馬)とは去勢された牡馬(オス馬)のことです。気性の荒い馬の性格を穏やかにし、レースに集中させる目的で去勢が行われます。
Q. セン馬はG1レースに出走できますか?
日本ではセン馬はクラシックレース(桜花賞・皐月賞・日本ダービー・優駿牝馬・菊花賞)には出走できませんが、天皇賞・ジャパンカップ・有馬記念・安田記念・マイルCS・スプリンターズS・チャンピオンズC・フェブラリーSなどそれ以外のG1には出走可能です。
Q. なぜ競走馬を去勢する(セン馬にする)のですか?
主な理由は気性難の改善です。気性が荒く能力を発揮できない牡馬を去勢することで、性格が穏やかになりレースに集中しやすくなります。さらにホルモンバランスの変化で故障に強くなり、息の長い活躍が見込めるとされます。一方で去勢された馬は種牡馬になれないため、引退後は乗馬や功労馬として余生を送ります。
Q. 日本で中央G1を勝ったセン馬は何頭いますか?
1986年以降のJRA中央G1を勝った日本のセン馬は、レガシーワールド(1993年ジャパンカップ)、マーベラスクラウン(1994年ジャパンカップ)、トウカイポイント(2002年マイルチャンピオンシップ)、サウンドトゥルー(2016年チャンピオンズカップ)、ノンコノユメ(2018年フェブラリーステークス)の5頭のみ。約35年で5勝、平均すると7年に1頭という稀少さです。海外調教馬まで含めると中央G1を勝ったセン馬は15頭になります。
Q. セン馬の読み方は?「騸馬」と同じですか?
読み方は「せんば」です。「騸馬」はセン馬の漢字表記で、同じものを指します。「騸」が常用漢字ではないため、競馬新聞や出馬表では「セン馬」とカタカナ交じりで書かれるのが一般的です。出馬表の性別欄では牡=牡馬、牝=牝馬に対して「セ」と表記されます。
Q. カランダガンはなぜ去勢されたのですか?
出走記録をさかのぼると、カランダガンは2023年8月のデビュー戦(2歳新馬)の時点ですでにセン馬として出走しています。日本の5頭のように「走らなくなったから去勢した」のではなく、走り出す前から去勢されていたことになります。欧州や香港では、素質を認めながらも早い段階で去勢に踏み切る判断が珍しくありません。種牡馬としての価値を最初から計算に入れず、競走馬として長く使い切る前提で仕上げるという設計思想の違いです。カランダガンは2025年にサンクルー大賞・キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス・英チャンピオンステークス・ジャパンカップを制しました。
Q. セン馬は引退後どうなりますか?
種牡馬にはなれません。去勢によって血を残す道は完全に閉じており、引退後は乗馬・誘導馬・功労馬のいずれかになるのが一般的です。マーベラスクラウンは引退後に乗馬となり、香港のゴールデンシックスティは北海道のノーザンホースパークで余生を送ることが発表されています。一方でセン馬は引退そのものが遅く、2021〜2025年の中央競馬では7歳以上での出走割合が16.9%と、牡馬の4.6%の3.7倍でした。種牡馬入りという出口がないぶん、走れるうちは走り続けます。
Q. 日本にセン馬は何頭くらいいますか?
2026年(8月上旬まで)の中央競馬では526頭が出走し、延べ出走に占める割合は5.28%でした。1990年は39頭・0.63%だったので、35年で比率は8倍以上、頭数は13倍以上に増えています。ただし中央G1を勝った日本のセン馬は5頭のままです。日本ではクラシックを狙える素質馬ほど去勢しないため、去勢に踏み切るのは条件戦で頭打ちになった馬が中心になるという事情があります。
セン馬という制度は、競走馬の「将来の血の継承」と「いま走らせる気性の改善」を天秤にかけた、極めて重い決断の上にあります。
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2018年2月18日、東京競馬場。セン化からわずか3ヶ月のノンコノユメが、ゴール前で内田博幸を背に外から伸びていった瞬間、スタンドからは「ようやくか」という安堵の歓声が上がりました。3年間勝ち切れなかったG1の壁を、去勢という選択がほどいた光景でした。
馬券の数字も、賞金ランキングも、結局のところセン馬の評価はこの「ほどけた」瞬間の積み重ねで決まる気がします。種牡馬の道は閉ざされても、目の前の一走に脚を使い切れる体になる馬がいる。35年で5頭という稀少な勝利の母数は、そうした個別の決断の総和なのだろう、と感じています。
その5頭が止まっているあいだに、2024年の安田記念をロマンチックウォリアーが、2025年のジャパンカップをカランダガンが勝っていきました。日本のセン馬は35年で5頭、海外のセン馬は直近2年で2頭。中央のG1を勝ったセン馬15頭という数字の内訳は、去勢という決断をどこで下すかの違いが、そのまま結果に出たものなのだと思います。
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