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キタサンブラックが勝てなかった宝塚記念を産駒イクイノックスが制覇、クロワデュノールは父の忘れ物を獲れるか

30秒で分かるキタサンブラックと宝塚記念


キタサンブラックはG1を7勝しました。菊花賞、天皇賞(春)を二度、ジャパンカップ、大阪杯、天皇賞(秋)、有馬記念。2,000mから3,200mまで、勝てるレースはあらかた勝った馬です。

その一覧に、宝塚記念だけがありません。2016年3着、2017年は1番人気で9着。阪神芝2,200mには、二度走って届きませんでした。

その宝塚記念を、産駒のイクイノックスが2023年に勝っています。翌2024年はソールオリエンスが2着。そして2026年6月14日、クロワデュノールが同じ舞台に立ちます。

※本記事のデータは編集部による独自集計です。

キタサンブラック産駒 着順 人気
2023 イクイノックス 1着 1番人気
2024 ソールオリエンス 2着 7番人気
2025 ソールオリエンス 6着 8番人気
2026 クロワデュノール 出走予定 未定

クロワデュノールにとっての宝塚記念は、本人の春古馬三冠リーチであり、同時に父が残した宿題でもあります。なぜキタサンブラックは宝塚記念を勝てなかったのか。その馬がなぜ宝塚記念に強い産駒を出すのか。血統をたどって考えてみます。

阪神競馬場の芝コースと夕暮れの空のイメージ
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G1を7勝した馬が、宝塚記念だけ勝てなかった


キタサンブラックは、とにかく勝ち鞍の多い馬でした。

2015年の菊花賞でG1を初めて手にし、天皇賞(春)は2016年と2017年に連覇。ジャパンカップ、大阪杯、天皇賞(秋)、引退レースの2017年有馬記念。獲ったG1は7つです。2,000mの大阪杯も3,200mの天皇賞(春)も勝ち、古馬になってからの取りこぼしの少なさは、同期や前後の世代と比べても抜けていました。

その7勝に、宝塚記念だけが入っていません。

宝塚記念での着順 人気 鞍上
2016 3着 2番人気 武豊
2017 9着 1番人気 武豊

2016年の3着は、勝ち負けの圏内ではありました。ひっかかるのは翌2017年です。大阪杯1着、天皇賞(春)1着と春を連勝し、誰もが本命に推した宝塚記念で9着。あの一戦をリアルタイムで見ていた人は少なくないはずです。武豊騎手が中団から仕掛けても手応えが続かず、直線で馬群に飲まれていく。1番人気の信頼が音を立てて崩れる、そんなレースでした。

2,000mも3,200mも勝った馬が、ちょうど中間の2,200mで止まる。距離の問題では片づきません。

宝塚記念のあと、キタサンブラックは天皇賞(秋)を快勝し、有馬記念を勝って引退しました。晩年にきれいに崩れたのは、この春3戦目だけ。勝てなかったG1をひとつ残したまま、種牡馬としての生活が始まります。

イクイノックスが2023年に獲った、際どい一勝


種牡馬キタサンブラックの看板が、イクイノックスです。

2022年の天皇賞(秋)と有馬記念を勝ち、2023年は始動戦から宝塚記念へ直行してきました。父が9着に沈んだ阪神芝2,200mで、息子もまた1番人気。父子そろって同じ重圧を背負ったわけです。

結果は1着、2分11秒2。ただ、薄氷の勝利でした。2着の10番人気スルーセブンシーズが同じ2分11秒2まで食い下がり、際どいハナ差。3着ジャスティンパレスも2分11秒4で、上位は団子です。あれほど強かったイクイノックスをもってしても、宝塚記念はきわどくなる。父が二度はね返された理由の一端が、勝った年の着差にも残っていました。

イクイノックスはこの後、天皇賞(秋)を1分55秒2のレコードで圧勝し、ジャパンカップも勝って引退します。獲ったG1のなかに、父が手にできなかった宝塚記念がきっちり収まっている。血統表を眺めると、ここだけ少し背筋が伸びます。

ソールオリエンスも2着。人気を問わず上位に来る


イクイノックスの勝利が一度きりの話でなかったことは、翌年が示しています。

2024年の宝塚記念は、阪神の改修工事のため京都競馬場で行われました。ここで2着に飛び込んだのが、同じキタサンブラック産駒のソールオリエンスです。皐月賞馬とはいえ、このときは7番人気。人気を落としていた馬が、宝塚記念ではきっちり走りました。2025年も6着で、極端には崩れていません。

産駒 着順 人気 開催
2023 イクイノックス 1着 1番人気 阪神
2024 ソールオリエンス 2着 7番人気 京都
2025 ソールオリエンス 6着 8番人気 阪神

1番人気のイクイノックスが勝ち、7番人気のソールオリエンスも2着に上がる。人気の高低に関わらず上位へ来るのが、キタサンブラック産駒の宝塚記念です。父本人が1番人気で9着だったことを思うと、なかなか皮肉が効いています。

一頭の単発なら偶然で済みます。二年続けてとなると、もう血統を疑うしかありません。

ブラックタイドとサクラバクシンオー、父系に流れる血


キタサンブラック産駒が宝塚記念で止まらない。その理由を血統からたどります。

キタサンブラックの父はブラックタイドです。ディープインパクトの全兄にあたります。父サンデーサイレンス、母ウインドインハーヘアという両親がディープと完全に同じ、一つ上の兄です。競走馬としてのブラックタイドはスプリングステークスを勝った程度で、弟のような怪物ではありませんでした。種牡馬としても長く地味な立場に置かれていた血です。そこからキタサンブラックという大物が出て、さらにイクイノックスが出た。傍流に見えたサンデーサイレンスの一脈が、ブラックタイドを通って現代の主役にまで太くなりました。

もう一本の柱が、キタサンブラックの母父サクラバクシンオーです。1,200mを舞台に短距離界へ名を残した快速馬で、日本の馬場で問われるスピードを濃く持っています。サンデーサイレンス系の粘りに、サクラバクシンオーの速さが差し込まれる。これがキタサンブラックという種牡馬の骨格です。

宝塚記念の舞台、阪神芝2,200m内回りは、坂を二度上りながら直線356mで脚を使うコースです。長くいい脚を保つ持続力と、最後にもうひと伸びするスピード。要求されるのはその両方で、キタサンブラックの血はこの注文に素直に応えます。坂で止まらず、直線でもうひと差し。産駒の宝塚記念での走りには、父系のサンデーと母父のスピードがこのコースで噛み合う瞬間が、はっきり出ています。

見逃せない事実がもうひとつあります。父キタサンブラックを持つこの3頭は、母系がまるで揃っていないのです。

産駒 母の父
イクイノックス キタサンブラック キングヘイロー
ソールオリエンス キタサンブラック Motivator
クロワデュノール キタサンブラック Cape Cross

母の父は、イクイノックスがキングヘイロー、ソールオリエンスがMotivator、クロワデュノールがCape Cross。日本のスピード血統あり、欧州の重厚な血あり、見事にばらばらです。母系が違えば仕上がりも気性も変わるのが普通で、それでもイクイノックスとソールオリエンスは2,200mの宝塚記念で上位に走りました。共通項は父キタサンブラックの一点だけ。母方がこれだけ違っても結果が揃うのは、父の形質がそれだけ前に出るからです。クロワデュノールが続けば、その何よりの裏づけになります。

クロワデュノールが背負う二つの線


2026年の宝塚記念に向かうクロワデュノールも、父譲りの戦績を積んできました。

2024年ホープフルステークスでG1を初めて勝つと、2025年は皐月賞2着のあと日本ダービーを制覇。2026年は大阪杯を1分57秒6、天皇賞(春)を3分13秒7で連勝し、宝塚記念で春古馬三冠のリーチをかけています。2024年6月のデビュー以来、すべてのレースで北村友一騎手が手綱を取ってきました。

この馬の宝塚記念には、二つの線が重なります。本人の春古馬三冠と、父が残した宿題です。とくに父との重なり方が、できすぎているほど似ています。

キタサンブラックの2017年は、大阪杯1着、天皇賞(春)1着から宝塚記念へ。クロワデュノールの2026年も、大阪杯1着、天皇賞(春)1着から宝塚記念へ。同じ並びで、息子が同じ舞台に立ちます。9年前に武豊騎手が味わった9着を、北村友一騎手とクロワデュノールが書き換えられるか。血統の裏づけなら、すでにイクイノックスが用意しています。あとは本番でどう出るか、それだけです。

まとめ


父が一度も先頭でくぐれなかった阪神の決勝線を、9年後、その産駒が父そっくりのローテで目指します。6月14日、クロワデュノールが今度はどんな脚でそこを抜けるのか。レース後にもう一度、父の9着の映像と並べて見たくなる一日になりそうです。

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